[ 理不尽な取引条件 ]
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出版社と取次の間に交わされる契約のなかで最も重要なものに、「取引条件」の決定があります。要するに、卸のパーセントと入金のサイクルのことなんですが、実にこれが厄介でして、一言では片付けられないものなんです。 正直に申し上げて、この問題さえなければ、出版業界は、もっと開放された業界になり、他業種からの参入も増え、活性化されることでしょう。2001年に破産した中堅の取次業者であった「鈴木書店」の債権者会議でも、この問題が取り上げられていました。弱小版元の代表者の方が、執拗に議題にするように発言されていたことでも、業界内に潜む負の遺産を見るようで、当事者の1人でありながら、釈然としない思いを強くしたのを思い出します。 差別的な取り扱いをされているという意識がメーカー側の一部にあるわけです。具体的に説明します。 設立年月日の古い版元と、新しい版元、大資本の版元や弱小版元との間に歴然とした違いがあるのです。 サラリーマンとして勤めていた設立60年ほどの版元の条件は、新刊委託の正味は、定価ごとの設定で基本的に72パーセント、翌月3割の現金入金、6ヵ月後の精算。注文については、翌月全額精算というものです。 かたや弊社の場合は、新刊委託は、一律67パーセント、7ヵ月後精算で、歩戻しが5パーセント、注文は翌月入金ですが、3割は6ヵ月の保留条件付です。 新刊委託と注文の違いは別項で詳しく書きます。歩戻しというのは、新刊委託にかかる手数料のようなもので、委託時の月末に入金から即控除されます。比較のために例示します。 本体定価1,000円の本を1,000冊委託するとします。 前者の場合は、1冊の卸し金額が、720円で、翌月には216,000円が入金されます。 弊社の場合は、1冊の卸し金額は、670円、7ヵ月後に返本を差し引かれた金額が入金されます。また委託当月に歩戻しとして、50,000円を支払わなくてはなりません。 どちらが良いかは一目瞭然ですよね。前者は、売れる売れないにかかわらず、新刊さえ出せば翌月には入金があるのですが、弊社の場合は、新刊を出してもお金になるのは7ヵ月後、ましてや手数料を支払わなくてはならない。 たとえ同じ著者で同じテーマの本を出版したとしても、この条件は変わりません。何年たってもこのままの条件です。
2003/04/06(Sun)
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