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[ 取引上の第1条件 ]
 1冊の本を製作するのにどれくらいの費用がかかるのか?
 人件費を考慮せず、本文250ページ、本文1色、3000冊、印税10パーセント、だいたいこれだけで150万円から200万円前後でしょう。本文中の図版やカバーデザインのように、かけようと思えば上限なく高額になるものもあるでしょうが、だいたいこんなものでできるでしょう。
 この費用を回収するためには、定価1500円とすると、卸し金額は1000円程度になりますから、2000冊売れてやっと元が取れるということになります。逆に考えると、3000冊売り切っても、100万円の利益しかないことになります。100万円もあればいいと思いがちですが(独立する前は当然こういう風に考えていたのですが)、今現在単行本の返品率は40パーセントを軽く超えています。つまり出版された本の60パーセント弱しか売れないわけですから、3000冊の場合は、1600冊になり、結局いくらつくっても赤字になるということになってしまいます。
 この例は単純化してお話しています。実際はもっとやっかいです。人件費は抜いていますし、管理費や営業経費も抜いています。まあ、どちらにしてももっと経費がかかるわけで、損益分岐点がドンドン上がることになり、もっと赤字が膨らむことになります。要するに前提の条件から間違っているわけで、60パーセントしか売れないのであれば、最初から定価を高くしたり、部数を増やしたりすればいいと数字上は考えます。
 当然こんな悠長なことではないのですね。3000冊刷ろうが、10万冊刷ろうが、その本を買って読んでみようと思う潜在読者の数は、だいたいにおいて一定ですから、何冊刷ろうが売れる部数はさほど変わらないのです。
 そう簡単には儲からない。儲かるどころか元を取るのさえ難しいのが出版ということです。
 取引は開始したが、2、3冊で倒産してしまったら事後処理が大変です。4冊できたらまた考えましょうということにならざるをえないでしょう。
 継続性なんですね。一度はじめたら永久的に取引をしていく。資本金の全部を使ってそれで終わりでは、面倒なだけなんです。取次さんにとっては。
 
2003/02/15(Sat) 晴れ

My Diary Version 1.21