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[ 1つめの壁 ]
 学生時代から将来は独立して出版社を経営してみたいと思っていましたから、サラリーマンとして出版の仕事に携わっていたときも、できるだけいろいろなものを経験しておいたほうが得だと考え、雑誌の創刊に首を突っ込んだり、単行本の企画編集をやったり、出版社で経験できる制作の仕事はひと通りこなしたと思っていました。
 そういう関係の学校とかセミナーにも参加し、予備知識は万全、あとは実践あるのみと、平成7年の春に会社を辞めると同時に親族から資金をかき集め独立しました。何とか1冊目の本を作り上げさてこれから販売だと意気込んだときに、まず1つめの壁が立ちふさがっていました。
 予備知識は十分でしたから、取次なる存在も熟知したつもりでしたが、やっぱり現実は厳しいですね。あのときの惨めさは今でも忘れません。
 
 印刷のあがったばかりの本を持ち、各取次を回り始めました。
設立趣旨書、企画書などを担当者の前に広げ、私の作ろうとしている本たちは、これまでにない企画で必ず売れますから、取り引きしないと損ですよ。広告もバンバンうちますし、書店営業もドンドンしますから、書店になければお客様から苦情が来るはずですから、その前に取り引きしときましょうよと。
 もちろんこんなに強気で強引に言ったわけではありませんが、当然取り引きしてくれるだろうと自信があったんですね。某大手取次担当者曰く、とりい書房さんの出資金は400万円ですよね。これでつくれる本は大体3冊ぐらいでしょうから、4冊目ができたときにもう一度いらっしゃってください。
 えーッどういうこと。
2003/01/31(Fri) 晴れ


[ 取次ぎ様のお通りだいA ]
 いくら本をつくっても、それを売ってくださる書店さんがなければ、ほとんどの出版社は成り立っていきません。ネット販売を比較的力を入れてやっている出版社もありますが、まだまだ微々たるもので、ほとんどの流通が書店を介したものです。講談社でも岩波書店でも、とりい書房でもそれは同じことです。ということは問題の取次さんのお力を借りなければ、どんな出版社でも本が読者の方々まで届かないことになります。
 ただ、最終的に本を売っていただいているのは書店さんです。読者の方々から直接本の代金をいただいているのも書店さんです。とすると、直接出版社から書店さんへ本を届けて、代金を回収すれば取次さんのお手を煩わさなくてもいいと考えますが、全国に書店は3万店もあります。この一つひとつに対応することははっきりいって無理なことです。まあ考えてみてください。本を書店さんまで送ったり、伝票のやりとりの費用や時間と手間はどれほどのものになるか。
 そこで各出版社は取次と取引をすることになります。実際99,9パーセントの出版社が取引しています。弊社も主要な取次さんと取引いただいています。ただスンナリト取引いただいたわけではありません。いろいろありましたし、今現在も山積しています問題は。出版社によってはなかなか取引してもらえないところもあります。その主導権は取次さんにあるのですね。
 私が独立した時もそうでした。即オッケイというわけではありませんでしたし、取引条件も最低のものでした。
 
   
2003/01/15(Wed) 晴れ


[ 取次様のお通りだい@ ]
 『取次』(とりつぎと読む)という、業種をご存知ですか?出版社に勤めていても、書籍営業にタッチしていなければ、ほとんどの方は付き合いがないでしょうね。実はこの取次の存在が、出版業界ではトンでもなく大きなものなんです。特に弱小出版社にとっては。

 取次さんの仕事内容を、はっしょって説明すると、
「出版社が製作した書籍等を書店まで運び、売れ残りを出版社に返品し、代金を精算する」
というようになります。
 つまり運送屋さんね。と友人が言いましたが、素人さんに簡単に説明するような時は、私も「横柄な運送屋さん」というようにしています・・取次の方は怒らないで下さいね。
 じゃあどうしてこの運送屋さんが問題になるのかというと、要するに独占企業なんです。
 大雑把に数えて、全国に3万店の本屋さんがあるとします。この全ての本屋さんが、この運送屋(取次)さんが運ぶ本しか仕入れられないんです。
 そこから必然的にできてしまう関係図が、

    取次>書店>出版社

になりますが、実態は、諸条件が絡み合って、とんでもなく複雑なんです。ドロドロの。
 詳しくは次回以降に。

2003/01/09(Thr) 晴れ

My Diary Version 1.21